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飛び散る紅い雫(しずく)
地に落ちては染み込み、地を紅く染めていく
そうして絶望という名の時が過ぎていった
後には何も残らない所業
後には後悔の念だけが天へ昇る所業
その地に女が舞い降りた
女は溜め息を吐き、やはり、と呟く
人の世がこうなるのは、世界の再構築が行われるから
必然……
そう女は思う。
「いつの世も、人は悲しい」
女はそう言うと、紅い雫(しずく)をすくい、そっと口に含む
そして自身を抱き締め、こう言った
生まれよ、新たなる命――
紅い雫(しずく)は蒼の涙に変わり、地を潤し
そして大地に命を芽生えさせた
小さな緑の命
そこから大木へとなるまで、まだまだ試練が多いだろう
ただ女はもがき苦しむ様を見届けようと思った――
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