<最終話> 


漆黒の翼は永遠の朱(あか)を誘う

朱い猛(たけ)る心を暗黒に染めて全てを無に還(かえ)す

女は思った

緑多き幸多き世には、自身はまだ舞い降りるべきではなかった、と

女の中から、朱(あか)い大きな翼が出て、宙を扇いだ

一瞬で世界が朱(あか)に染まり

次第に薄い朱(あか)になりて

白に……

最後に「無」の世界を織りなした

全ては無

そう、それでいい

「ここから始まるのだから」

女はそう呟くと、天へと溶け込んでいった

静寂なる無の世界を残して――


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