<1>
その女は風に揺られて、ただそこに居た
唇をキュッと噛み締めると、そこから紅が眩しく輝く
紅は唇を伝い、一滴一滴静かに地へ降りていく
その紅が舞い降りた地は、そこから緑が芽吹き、すくすくと育っていく
育つ芽を見て、女は微笑む
その女の眼は開かない
だが、千里を見通せる
そんな事は簡単だ
ただ、心を傾けるだけで良い
ぽつり
女の体に水が降りる
女は天を仰ぎ、口を開け、その粒なるものを喉に通す
すると、体が黄金色に輝き、女は天へと戻っていった
緑だけを残して――
▲top